【歯科衛生士】
金子真沙子・住吉未央・稲葉玲子・甲斐香織
◇歯ブラシ圧が強いとどうなるの?
◇「300gの歯ブラシ圧」とはどのくらい?
◇お家でできる虫歯予防(スエーデン インテポリ大学方式)
◇補助的清掃用具の使い方
◇歯ブラシの管理出来ていますか?
歯の際(歯と歯茎の境目)がV字型に削れています |
適切な歯ブラシ圧は「300g」と言われています。歯ブラシ圧が強い場合、次のようなことが起こりやすくなります。 |
・歯の根が露出する、歯(特に露出した歯根)が削れる。 そうなることにより歯がしみやすくなったり痛みを感じたりします。
・歯ブラシの毛先が広がる。そうなると歯に歯ブラシが正しくあたりません。その結果、汚れがうまく落とせない。歯肉を傷つける。ということになります。 |
または、歯ブラシを手の甲に当てて、こそばゆいくらいです。
普段磨いている強さと比べてみてください。
また、歯ブラシを大きく動かすことによっても力が入りやすくなります。一歯ずつ磨くことも心掛けましょう。
それでもどうしても力が入ってしまう場合は、歯ブラシの毛の硬さを少し柔らかめにします。
汚れを落とすのが目的の歯磨きでお口の中を傷つけたのでは悲しいですものね!
お家で出来る虫歯予防として、「フッ化物入りの歯磨き粉」を使うのはいかがでしょうか? 今、市販で売られている歯磨き粉の約88%の中にフッ化物が配合されていますので、ほとんどの方が、歯磨剤による虫歯予防に取り組まれていると思います。 では、どういった歯磨き粉を選べばよいのでしょうか。歯磨き粉の後ろに表示された成分を参考にしてください。 「モノフルオロリン酸ナトリウム(MFP)」や「フッ化ナトリウム」、「第一フッ化スズ」という表示があればフッ化物配合の歯磨き粉になり、これを2〜3年応用することによる虫歯の抑制率を以下に示します。
【フッ化物の効果】 1.歯の再石灰化を促進する。 2.フッ素が歯に取り込まれ虫歯菌の出す酸に溶かされないように、歯を強くする。 3.虫歯菌が出す酸を抑制する。 これらの効果があるため、虫歯予防によいとされています。 特に乳歯や、萌出したての永久歯は、虫歯菌の出す酸にとても弱い為、ぜひフッ化物入りの歯磨き粉を使われる事をお薦めします。 しかし、フッ素入りの歯磨き粉を使ったからといって、「虫歯にならない」と言う訳ではありません。基本は歯ブラシを使って歯垢をしっかりとることが大切です。
歯ブラシのタイミングは朝食後、就寝前です。虫歯の多い人は昼食後も行ってください。高齢者の方は就寝前には必須です。 歯ブラシ後の飲食はフッ素の効果を下げますので、2時間は避けるようにしてください。たとえ緑茶であっても止めた方がよいでしょう。 また、フルオライドジェル(ジェルコート)を歯間ブラシ(糸ようじ)に少量つけ歯と歯の間を磨くとより効果的です。この方法は、ドライマウス、歯周治療を受けた人にとても有効です。 また、ラウリル硫酸塩はドライマウスを引き起こす可能性があるとの報告がありますので、これを含有した歯磨き粉は老齢者にはあまりお薦めできません。 歯磨き粉は毎日使うものです。フッ化物配合の歯磨き粉を上手に使うことにより、ご家庭で毎日手軽に虫歯予防に取り組めるのではないでしょうか。 |
普段、皆様は歯ブラシだけで歯磨きをされていることだろうと思います。 【歯ブラシのみによる清掃後】 |
奥歯、歯の裏側、歯と歯の間、歯と歯茎の境目等の細かい部分、窪んだ部分は案外残っていますね。これらは歯ブラシの苦手な部分です。 磨き残しは20%以内(出来れば10%以内)にしていかないと磨きの効果は現れません。 |
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では、実際にどのようにすれば良いでしょうか? 補助的清掃用具が効果を発揮します。 |
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特に磨きにくいポイントにはこれを使用してみましょう。 ・歯と歯茎の境目 ・奥歯の裏側、奥側 ・親知らずなどの生えかけの歯 ・歯と歯の重なっているところ ・歯と歯の間 |
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歯と歯茎の境目 |
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歯と歯の間 |
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奥歯の奥側 |
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親知らずなどの生えかけの歯 |
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歯と歯の重なっているところ |
デンタルフロス |
このように持ちます。 |
デンタルフロスを使用して隣り合う歯の面を清掃します。 |
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歯と歯の間 |
歯間ブラシ |
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歯間ブラシを使用して歯と歯の間を清掃します。 |
歯と歯の間 |
歯間ブラシ |
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歯ブラシ+補助的清掃用具の使用でプラーク除去率は80%を超えます。
お口の中の健康を保つためにはセルフケアが重要となります。
手間はかかりますが補助的清掃用具のご使用をお薦めします。
また、各用具にはサイズ等様々な種類がありますので、お口の状態にあったものをお選びください。(誤ったサイズ等のものを使用したり、使い方を誤りますと、歯・歯肉を傷つける恐れがありますのでご注意ください。)
お口の中をきれいにする歯ブラシ。では、その歯ブラシはきれいですか・・? |
細菌の多くはジメジメした環境を好みます。さらに、栄養となる食べカスの残った歯ブラシは彼ら?にとって最高の「家」となります。
まず、使用後の歯ブラシはしっかり水洗しましょう。このとき、溜め水ではなく、流水で洗います。ブラシの毛の根元は汚れがたまりやすいので注意して洗いましょう。また、植毛が密になっているブラシは汚れが毛に絡まりやすいので、こちらにも注意して下さい。
水洗することで多くの食べカスや細菌を落とすことができますが、100%とはいきません。歯ブラシが濡れていると、ブラシの中にわずかに残った細菌が繁殖しようとします。
水洗後の歯ブラシはよく乾燥して下さい。風通しの良い場所で、毛の部分を上にして立てて置くのが理想的です。キャップをする場合は毛が完全に乾いてからの方が良いでしょう。
前項でお話したように、水洗ですべての細菌を落とすことは困難です。では、煮沸消毒や漂白剤などの薬液消毒は必要でしょうか?
ナイロン毛や持ち手がプラスチック製の歯ブラシの耐熱温度は80℃前後です。煮沸消毒をすると歯ブラシが変形してしまいます。
また、消毒薬液の多くはお口に入れると危険です。薬液をすすぎ残したときのことを考えると使用しない方が良いでしょう。
基本的にはしっかり水洗・乾燥していれば問題ありません。それでも気になる場合は、殺菌効果のある洗口液に数110分浸してから、水洗・乾燥してみてください。
新しい歯ブラシへの交換は、一ヶ月に一度は行ってください。傷んだ歯ブラシには細菌が吸着されやすく、水洗しても落ちにくくなるためです。
また、一ヶ月以内でも汚れが目立ったり毛先が開いた場合は交換しましょう。
次に歯ブラシの材質ですが、最も一般的なナイロン毛のものをおすすめします。ナイロン毛は水切れが良く、天然毛(豚毛など)に比べると乾燥しやすくなっています。
また、比較的安価なものが多いので、交換もしやすいのではないでしょうか。
ナイロン毛は毛のやわらかさなど種類が豊富なので、ご自分にあったものを探してみてくださいね。
以上がご家庭で注意して頂きたい歯ブラシの保管法です。皆様の保管状態はいかがでしたか?
雑貨屋さんに行くと、紫外線殺菌灯のついた機能的な歯ブラシ立てや、歯の形をしたかわいい歯ブラシ立て(当院受付にも飾っています)など、いろいろな歯ブラシ立てを目にします。
お気に入りのコップに立てるのもいいかもしれません。楽しみながら正しく歯ブラシを保管してみてくださいね!